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インターネット上の誹謗中傷対策について
令和2年5月23日,女子プロレスラーの木村花さんが亡くなられました。
まずは、木村花さんのご冥福を衷心よりお祈りします。
さて、木村花さんをめぐっては,SNSにおいて誹謗中傷の投稿が大量になされていたとのことですが、このような誹謗中傷をした加害者に対して,毅然とした態度で戦える人は少数です。
確かに匿名による誹謗中傷であっても,被害者は,SNSの管理者に対してIPアドレスの開示を求め,IPアドレスの開示を受けた後はアクセスプロバイダに対して発信者情報開示を行うことで,投稿者の氏名又は名称,住所,電子メールアドレス等を特定できる場合はあります。しかし,手続きが複雑であるほか、費用倒れになるリスクもあるため、泣き寝入りをしている方が大半ではないかと思われます。
そのため、令和2年5月26日には、高市早苗総務相が記者会見において、「匿名で他人を誹謗中傷する行為は人として卑劣で許しがたい」と述べた上で、発信者の特定を容易にするための制度改正を「スピード感を持って行う」と語ったとのことです。
思えば、ストーカー規制法が制定されたのは、桶川ストーカー殺人事件がきっかけでした。
飲酒運転による逃げ得を解消するために道路交通法が改正されたのは、福岡海の中道大橋飲酒運転事故がきっかけでした。
そのため、発信者情報開示が容易になる方向での改正も、今後進められる可能性が高いと思われます。
現に、令和2年4月30日には,総務省において,発信者情報開示の在り方に関する研究会の第1回会合が行われています。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/information_disclosure/02kiban18_02000091.html
これは,総務省の運営する違法・有害情報相談センターで受け付けている相談件数が,令和元年度には平成22年度の相談件数の4倍に増加するなど,インターネット上における権利侵害情報の流通が増加している一方で,発信者の特定が技術的に困難な場面が増加していることを踏まえ,発信者情報開示請求の対象となる発信者情報の拡充や権利侵害が明白な場合に任意開示を促進する方策などの検討が行われているものです。
しかし、一方で、発信者情報開示を過度に容易にすることは、表現の自由を委縮させるおそれもあります。
そのため、発信者情報開示を容易にする議論にあたっては、表現の自由とのバランスにも気をつける必要があります。今後の法整備に期待するところです。