2021年4月/赤瀬法律事務所ブログ

2021年4月

中小企業でも「同一労働同一賃金」が始まりました

令和3年4月1日から,中小企業にも,「同一労働同一賃金」が適用されるようになりました。
具体的には,「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の第8条が定める「不合理な待遇の禁止」が中小企業にも適用されることとなりました。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=405AC0000000076

第8条は,次のとおり定めています。

事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

この条文を見ていただくと分かる通り,第8条は,「同一労働であれば同一賃金にすべき」とまでは求めていません。「同一労働同一賃金」というキャッチフレーズではありますが,法律が求めているものは,「雇用形態に関わらず,その待遇に,不合理と認められる相違を設けてはならない」ということです。そのため,①同一労働であっても,合理的な相違を設けることは許されます。逆に同一労働でなくとも,不合理な待遇差を設けることは許されません。また,②賃金だけではなく,賞与や退職金,各種手当や福利厚生についても,不合理な待遇差を設けることは許されません。

それでは,どのような待遇差が不合理と判断されるのでしょうか。この点については,いくつか最高裁判所の判例が出ています。

まず,「賞与」の待遇差に関する判例として,大阪医科薬科大学事件の判例があります(最高裁第三小法廷令和2年10月13日判決)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf

同判例では,賞与の性質やこれを支給する目的を踏まえて,正職員に対して賞与を支給する一方で,アルバイト職員に対して賞与を支給しないという労働条件の相違は不合理ではないと判断されました。

また,「退職金」の待遇差に関する判例として,メトロコマース事件の判例があります(最高裁第三小法廷令和2年10月13日判決)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf

同判例では,退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて,正社員に対して退職金を支給する一方で,契約社員に対して退職金を支給しないという労働条件の相違は不合理ではないと判断されました。

さらに,各種手当や夏季冬季休暇の待遇差に関する判例として,日本郵便事件の判例が3つ,あります(最高裁第一小法廷令和2年10月15日判決)。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/089773_hanrei.pdf
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/089772_hanrei.pdf
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/089771_hanrei.pdf
これらの判例では,それぞれ次のとおり判断されています。

  • 正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,契約社員に対して年末年始勤務手当を支給しないという労働条件の相違→不合理
  • 正社員に対して祝日給を支給する一方で,契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違→不合理
  • 正社員に対して扶養手当を支給する一方で,契約社員に対して扶養手当を支給しないという労働条件の相違→不合理
  • 私傷病による病気休暇として,正社員に対して有給休暇を与える一方で,時給制契約社員に対して無休の休暇のみを与えるという労働条件の相違→不合理
  • 正社員に対して夏季冬季休暇を与える一方で,時給制契約社員に対して夏季冬季休暇を与えないという労働条件の相違→不合理

それぞれの判決文を詳しく読めば,いずれの判例も,各待遇の趣旨・目的を踏まえて,職務の内容やその他の事情を考慮した上で,待遇差の不合理性を判断していることが分かります。

各企業の担当者が,自社における社員間の待遇差について,合理性があるとされるのか,不合理だとされてしまうのかを判断する際には,これらの裁判例や,厚生労働省が出している同一労働同一賃金ガイドラインを参考に判断することになります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

なお,判断に迷われた際には,赤瀬法律事務所までご相談されてください。

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